育児介護と両立支援

子育て・介護と仕事の両立を支援する企業内の制度のことです。育児・介護休業法により、企業には育児休業や勤務時間短縮等措置などの導入が義務づけられています。義務があるからと言って、無制限に支援をすることは企業にとって非常に困難です。きちんと制度の枠内でできる限りの支援をしていくことが、企業にとっても労働者にとっても安心できる環境といえるでしょう。

出産前後のフォロー

産休中は健康保険から「出産手当金」、育児休業中はハローワークから「育児休業給付」が支給されますから、企業としては休業中に当該従業員に対して給与を支払う必要はありません。

また、育児休業期間は社会保険料は免除、産休期間の社会保険料も免除される予定になっていますので、企業にとって負担が少ない仕組みになっています。しかしながら、制度を活用するためには手続きをしていく必要はあります。中小企業の人事担当者の場合は手続きに四苦八苦することも少なくありません。社会保険労務士などの専門家を活用していくことにより、人事担当者の負担を減らし、職場環境を整え、女性従業員の定着率を上げることが可能になります。

◆手続き業務

産前産後休業から育児休業に至るまでに、健康保険、雇用保険等様々な手続業務が発生します。社会保険労務士はそれらの手続の専門家です。

◆両立支援制度の効果は?

労働政策研究・研修機構が平成18年6月から7月に行った「仕事と家庭の両立支援に関わる調査」では、次のような調査結果で出ています。

女性従業員の勤労意欲を高める
  • 大いに効果があった22.8%
  • ある程度効果あった68.9%
  • 効果があった総計97.7%
女性従業員の定着率を高める
  • 大いに効果があった33.5%
  • ある程度効果があった57.1%
  • 効果があった総計90.6%

その他「女性従業員の帰属意識を高める」「従業員の仕事に対する満足度を高める」「顧客に対するイメージアップ」「採用で優秀な人材を集める」などの項目で効果があったという結果が軒並み80%から90%となっています。

両立支援助成金

両立支援助成金は、従業員の職業生活と家庭生活の両立を支援するための取組をした事業主などに対して支給する助成金です。

1. 出生時両立支援コース

男性従業員が育児休業を取得しやすい職場風土作りのための取組を行った事業主に助成します。

男性も育児休業給付を取得した場合、育児休業給付が受給でき、休業日程によっては社会保険料が免除されるなど、社会保険制度から従業員への経済的支援もありますので、男性の育児休業取得に取り組んでみてはいかがでしょうか。

① 男性労働者の育児休業

【主な要件】
・男性従業員が育児休業を取得しやすい職場風土づくりのための取り組み
・男性従業員が子の出生後8週間以内に開始する連続14日以上(中小企業は連続5日以上)の育児休業を取得

【支給額】(<>内は生産性要件に該当した場合の額)
・1人目の育休取得             57万円<72万円>
(中小企業以外)               28.5万円<36万円
・2人目以降10人目まで
 a.5日以上14日未満    14.25万円<18万円>
 b.14日以上1か月未満    23.75万円<30万円>
 c.1か月以上        33.25万円<42万円>(中小企業以外)
 a.14日以上1か月未満   14.25万円<18万円>
 b.1か月以上2か月未満 23.75万円<30万円>
 c.2か月以上        33.25万円<42万円>

② 育児目的休暇

【主な要件】
男性従業員が子の出生前後に育児や配偶者の出産支援のために分割して取得できる休暇(子の看護休暇、介護休暇及び年次有給休暇を除く)制度を新たに設け、対象男性従業員1人につき8日以上(中小企業事業主は5日以上)の育児目的休暇を取得したこと。

【支給額】
  28.5万円<36万円>
(中小企業以外)
  14.25万円<18万円>

【中小企業事業主の範囲】

資本金の額   又は出資の総額 常時雇用する  労働者の数
     小売業  5,000万円以下        50人以下
   サービス業  5,000万円以下       100人以下
     卸売業         1億円以下       100人以下
 その他の業種         3億円以下       300人以下

「資本金又は総額」、「労働者数」のどちらかの要件を満たした場合、中小企業事業主となります。

2. 介護離職防止支援コース

労働者の仕事と介護の両立に関する取組を行った事業主に助成します。

【主な要件】
・厚生労働省が指定する資料に基づき、以下の全ての取組の実施
①従業員の仕事と介護の両立に関する実態把握(社内アンケート)
 ②制度設計・見直し
 ③介護に直面する前の従業員への支援(社内研修の実施、リーフレットの配布)
④介護に直面した従業員への支援(相談窓口の設置及び周知)
 ⑤働き方改革
・介護休業または短時間勤務等の介護制度の利用

【支給額】(<>内は生産性要件に該当した場合の額)
介護休業の利用 中小企業    57万円<72万円>  中小企業以外 38万円<48万円>
介護制度の利用 中小企業 28.5万円<36万円>  中小企業以外 19万円<24万円>

3. 育児休業等支援コース

① 育休取得時・職場復帰時
育休復帰支援プランを作成し、プランに基づき、労働者の円滑な育児休業取得、職場復帰に取り組んだ中小企業事業主に対して助成されます。

【主な要件】
・育休復帰支援プランの作成とそのプランに基づいた業務の引継ぎ等の実施
・3カ月以上の育児休業の取得

【支給額】(<>内は生産性要件に該当した場合の額)
・育休取得時 28.5万円<36万円>
・職場復帰時 28.5万円<36万円>
育休取得者の職場支援の取り組み実施時に加算 19万円<24万円>

② 代替要員確保時
育児休業取得者の代替要員を確保するとともに、育児休業取得者を原職復帰させた中小企業事業主に対して助成されます。

【主な要件】
・就業規則等に育児休業が終了した労働者を原職等に復帰させる旨を規定
・対象労働者が3か月以上の育児休業を取得した上で、事業主が休業期間中の代替要員を確保
・対象労働者が育児休業終了後に上記規定に基づき原職等に復帰し、さらに6か月以上継続就業

【支給額】(<>内は生産性要件に該当した場合の額)
・対象労働者1人あたり 47.5万円<60万円>
対象者が有期契約労働者の場合に加算 9.5万円<12万円>

③ 職場復帰後支援
育児休業から復帰後の従業員を支援するため、子の看護休暇制度や保育サービス費用補助制度を導入し、従業員に利用させた中小企業事業主に対して助成されます。

【子の看護休暇制度の導入】
・制度導入時 28.5万円<36万円>
・制度利用時 取得した休憩時間に1,000円<1,200円>を乗じた額

【保育サービス費用補助制度】
・制度導入時 28.5万円<36万円>
・制度利用時 事業主が負担した費用の3分の2の額

4. 再雇用者評価処遇コース

 妊娠、出産、育児または介護を理由として退職した者が適切に評価され、復職できる再雇用制度を導入し、希望者を採用した事業主に支給されます。

【主な要件】
・妊娠、出産、育児または介護を理由とした退職者についての再雇用制度を導入
・上記制度に基づき、離職後1年以上経過している対象労働者を再雇用

【支給額】(<>内は生産性要件に該当した場合の額)
・再雇用1人目   中小企業   38万円<48万円>   中小企業以外 28.5万円<36万円>
・再雇用2~5人目 中小企業 28.5万円<36万円>  中小企業以外 19万円<24万円>

※助成金の支給申請は手続きが煩雑で書類に不備があると助成金が支給されないケースもあります。社会保険労務士は、助成金の申請などについてもプロフェッショナルですので、助成金の活用等をお考えの場合には、お気軽にご相談ください。詳しくは、下記のページも参考にしてください。

各種助成金対策